短歌とTANKA

青い傘

       青い傘      岩尾淳子

 

チェロケースを抱えた人が乗ってくる神戸線には冬の匂いす

 

空を見て傘をひろげる青年の息しろければ駅ふくらめり

 

砂浜がぼんやりあって鍵のないよわい海ならそこに見えます

 

とけそうな中州の縁にこの世しか知るはずもない水どりの群れ

 

読むことはさみしい門かAmazonの箱より遺歌集はがしておりぬ

 

だれだって記憶ならある青鷺が冬の継ぎ目に刺さっているも

 

あれからはすっかり変わって知っていた人もいるのに思い出せない

 

冬のたび〈しあわせはこべるように〉を歌いたる小学生の薄い上履き

 

人の死ぬニュースはいつも新しくあふれたミルクの散らかる速さ

 

お豆腐に刃を入れてゆく断面はきれいね、たましい持たないものは

 

鮟鱇の骨をひき抜く感情のどこからだって水はあふれる

 

手のひらのくぼみに見える暖かな谷に眠たい蝶ならおいで

 

一九五七年に生まれて二〇一五年は雪の舞う下校時間のようなあかるさ

 

大丈夫忘れてしまってかまわない雪花月のやさしいうたを

 

この青い傘はあなたのものでしょう滅んだ時代にお会いしました

 

路上とはあたたかい胸 バスのゆくところによって弱く雨ふる

 

棄てらるるもの明るくて黄のいろの網に覆わる塵芥置き場

 

ぎんいろの郵便受けの廂にも雲がながれる剥がれるように

 

この空を覚えていようよ綿雲の子供が曲がってゆくもどりみち

 

わたしたち何から語ろうこれ以上みじかくなれない冬至のひかり

 

昨日、京都に年末のお墓参りに行ってきました。一二月に行くと東山の山麓はたいてい時雨です。早々に引き揚げて、買い出しに回ります。最近、毎年行くのは、紫野の大宮商店街です。ここは、お店が豊富にあって品物がよく揃っています。普段はスーパーでしか買わないので、商店街をぶらぶら歩きながら気まぐれに余計な物まで買うのはちょっとした楽しい時間です。裏通りに入ると、目に付くのは玄関先の南天の木です。間口の小さな家にも鉢植えの南天がしっかり育っています。冬の曇り空に南天の赤がよく映えていて引きしまった美しさに出会うことができました。

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