短歌とTANKA

炎の魚

      炎の魚         田中教子

 

炎より生(あ)れし金魚を泳がせるほそき水ゆく我の夏帯

 

天漢のはずれのくらき星にして昴、古典のなかにうるはし

 

蝋燭の炎のうへに手をかざしそこに生まるる風を拾へり

 

人魂の青きを点し夜のふけの厨にひとり立つはなにもの

 

書庫のなか探してをれば頭上より「ここ」といふ声降りてきたれり

 

東路を歌の解釈しつつゆく雲ありドクター・ヘイズとふたり

 

恥かかぬやうにこっそつり花束を誰とも言はず渡してかへる

 

ひきこもりの青年我に救はれて山の上空すこしあかるむ

 

我が視界切り刻まれてある昼のやさしきかもよ大和国原

 

いつか我は鳥の血族 はらはらと視界の端をこぼれる木の葉

 

エコーの神とよびたき医師にいまいちど命救はれ年の瀬となる

 

歯車のかたちに閃輝暗点の見えつつ学舎の廊下歩めり

 

太りすぎを気にするやうにと青菜のみ我に与へて去りゆきし人

 

今度あつたらどついてやるわと思ひしに姿見えなくなりたる兄よ

 

幽冥のかなたに花の咲く夜を痛みに耐えて歌をうたひぬ

2024年4月
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