『さくらのゆゑ』 今野寿美 砂子屋書房2014.7.26
まづきつとあるいはもしや恐る楽さくらのゆゑといふことあらむ
はつはつに今も咲かせていとほしきもののひとつのきうかなづかひ
たうたうと春の大地をきり分けて貌それぞれの右岸と左岸
あぼろあぼろ水に輪郭与へつつ葦はよしなどいはれてそよぐ
長き疑念戦後生まれのわれに問ふ赤くなかつた赤紙一枚
白かりし教育召集令状の闇にはふられたる現代史
脱ぎいでて脚の先までまだ白くたたまれてゐる羽みづあさぎ
「うまいことやつたぢゃないの」一度だけ会つた方代さんは言はしき