雨戸すこし開けてねむればその幅に月が収まる夜の深きとき
呼び交はす何の鳥かもかうかうとひとりものいふこのみどりごは
山にふり落とされたといひしひと そのなつかしき声をおもへる
遠街のはづれのあかるいみづたまりあそこに着水するよといへり
あけぼのに白鯨の雲したがへてきみ帰りこよ桃の咲くころ
あとかたもない、といふこゑ過りたる青空の端折りかへしおく
なきひとが笠置山にて焼きくれし花瓶に夏の雨を満たせり
地に低くびつしりと咲く向日葵のひとつだに夏の陽にしたがはず