短歌とTANKA

黒山羊と白山羊     岩尾淳子

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くしゃくしゃの風にかわいた時の穂がきらきら揺れる北半球に

運ばれる舟に抱かれて乗ったろうアブドラ・アイラン小さな膝は

黒山羊と白山羊並んでゆきし径シリアの爆ぜる丘のめぐりの

夜ふけて眠りのなかに降る雨のなんてさみしい脳にいるのか

わたくしを許しも裁きもなさらない千年座せる弥勒菩薩は

姑さまは何も召さずに鈴のごと限りのさまにものしたまうを

風うすき姑の肺あり秋さりてエノコロの穂はゆれてやまぬも

この道を文字になるまで歩きたい挿絵のなかのしずかな月夜

明け空を移りゆく声短くてほろんでしまうと啼いているのね

すじ雲の空いっぱいに見えている橋をわたって帰りたいけど

2024年3月
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