雁部貞夫著『『韮菁集』をたどる』青磁社2015.9.9
本著216頁(あとがき含む)は、土屋文明の『韮菁集』とその舞台をたどる遥かな旅の記録である。登山家として知られる著者は、かつて『韮菁集』を懐になんども辺境を旅したという。だが、これは、旅行記ではない。時空を隔てた『韮菁集』の舞台に思いをはせ、詩情の内部に分け入った、言わば雁部貞夫氏自身の、人生の旅路の記録である。
また、奇しくもこの著は、かつて『韮菁集』を出版した札幌および東京の青磁社の流れをくむ、現在の青磁社から出されたのも縁深く感じられるところである。
横はる吾は玉中の虫にして琥珀の色の長き朝焼け 土屋文明