短歌とTANKA

オキゴンドウ   森垣 岳

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イルカに比べて不格好でぬめぬめと黒い生き物が水族館のプールに飼育されていた。なにか自分と似たところがあって好感のもてるその生物は生まれ出た瞬間より泳ぐ術を身につけている。息子は立ち上がって歩けるまで1年以上の要してしまった。

 

濁りなき水にひたせば永らえず余命短しタモロコの群れ

やわらかな風と息子を抱き上げる帰宅直後の習慣として

熱帯の果実は赤く頬染めて帰宅直後の我によりくる

ままごとの玩具唾液に濡れながら冷えて日影に転がりていつ

18の我、いずれは憎むべき父となる日を知らず過ごしき

生まれでた時より泳ぐすべを知るオキゴンドウの海深かりき

苛立ちを抑えるために過剰なる敬語でお話申し上げます

立ち上がりちち欲る牛を照らし出す西日よもっとやさしく照らせ

明日より授乳をやめる決断を下されしこが歩みはじめぬ

錆び付いたエンジンのごとき音立てて午前3時の児は泣き止まず

美しき数式を知らぬわがまえで積み木の塔をくずして笑う

ビロードの黴をまといし蜜柑捨て子に与うべき果実を選ぶ

旅先の一つとなりし故郷よいまだ生家は残っているか

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