梅園のさかりは過ぎて古びたる幹あたたかき声を持つらし
からっぽの弁当箱をかたづけて職業というは箱のようなり
生徒らが解いてくれろと差し出せる過去問に読む阿仏尼の歌
うきうきと開いたことがあったかなあ数え切れない教室の戸を
苦しくてやめるというにああわれは夢の授業に笑っていたり
卵ケースの卵をひとつ抜き取しりのちに生まれるしずかなる穴
タブレットに防人の歌を読みながら真旅ということ夜更けて思う
垢のつく衣の歌のかなしかる占部虫磨呂は還れたろうか
切り花をほぐせばしおれた菜の花は夕べのひかりを宿しているも
ああ夜はなんてあかるい、古雛となりてひとりでいただくお酒