短歌とTANKA

終はりなきトンネル       大石真由香

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サラダ用のガラス鉢割れてある中に我の歯ひとつ抜け落つる夢

真夜中のキッチンに立てば冷蔵庫の野菜が各々死期を語れり

チリチリと耳鳴り止まず眠れぬ夜 過去の痛みを思ひ出してゐる

胸中に虎を飼ひゐし十七の頃ニュースで「十七歳」が叫ばれゐき

こんなにも好きだつたのに「好き」の気持ち押し売りをして別れたあの子

この世界消してやりたき衝動に「S・カルマ氏の犯罪」を読む

我が胸にナイフを突き立て我が鼓動の強く打てるに我に返りぬ

生きることを楽しむといふ才能を前世(さきのよ)に置きて生れしか我は

短歌(うた)を詠むことに心の咎めたる夜ひたひたと底冷えの来る

今ここにゐてもよいのか 地に陰を刻める銀杏の大樹見上げる

終はりなきトンネル進んでゆくことが生きることかと友の言ひけり

少年たちにもそれぞれの過去があつただらう少年刑務所の前を過ぐ

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