ガンジーを語るをとこのこゑ柊の葉の尖触るる痛みのやうに
<北帰行>酔へば唄ひし亡父のこゑしずくしてをり闇の奥処に
ペガサスの大四辺形仰ぎみつ漂泊とふ一生われに在らざる
瓢湖とふ青のひとひら如月のなづきに浮かべ眠らむひとり
深海に沈みゆきたる鍵あらむレントゲン蒼き耳の画像に
薄明のうすむらさきまでを渉りゆく空中回廊ひとあやめたき
遠天にとはにかへらぬ破船ありひかり曳くごとこゑ雫れゐむ
百年が佇つてゐる春風に吹かれ荷風先生あゆみし路地に
春の天(そら)ひとをいつぱい雫すからポリスに置かむ大き皿
アナトリア半島吹く風いつかきみわれ果ててこゑ ゑまふ かな