短歌とTANKA

「子午線の繭」評            龍本那津子

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1 海にきて夢違観音悲しけれとほきうなさかに帆柱は立ち

帆船の帆柱が夢違観音像のすっと伸びた背を、帆の曲線がお腹のふっくらとした丸みを思わせます。
うなさかの向こうには補陀落があり、船はそこからやってくるのでしょう。

2 ものみなは性器のごとく浄められ都市の神話の生まるると言へ

比喩が面白いと思います。古事記の国生みの神話と現代?の都市が交錯するかのようです。

3 死者も樹も垂直に生ふる場所を過ぎこぼしきたれるは木の実か罪か

死者も樹も垂直に生ふる というのがよくわからないのですが心惹かれました。
丈高く伸びた木々の森の中を見上げながら歩いているのでしょうか?

4 石仏に似し母をすてて何なさむ道せまく繁る狐の剃刀

石仏に似た母、というのが印象的でした。古拙の笑みというよりはむしろ埴輪の目尻を思い出しました。狐の剃刀、という言葉の感じもすきですが、毒のある花なのも気になります。

5 ある夜ひそと盆地は海となりゆかむ絶えて聞かざる相聞の夜に

ダムの底に沈む運命の集落でしょうか。若者たちはすでに村を離れ、恋人たちが愛を語ることももはやなく、静かに滅んで行く村の歌と思います。

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