青年となりし子のつく嘘ほどのあをいレタスの一葉をはぐ
路地の奥の孤島のやうな一軒に機械の声で鳴く鳥がゐる
まだうまく鳴けない雛ののみどから錆びた機械の音する四月
シーソーのきしみの音にカナリヤの雛が鳴きだす沈黙の家
ひな鳥は機械の音でないてをり夫婦喧嘩の終りしのちを
日想観見に来て拾つたライターでひとりしずかに地平を燃やす
落とし物の黒縁メガネをかけられた二宮金次郎と目があふ
浮遊する人や車や自転車が硝子のわたしの上をながれる
天才の足跡を追ふ旅の午後 頭の奥で蝉が鳴き出す
詩ごころの大統領の演説とそらおそろしいコーヒー色の雲