母と娘 三宅眞里
母 乳つかむ小さき指に口づけて赤子のにおい母となりし日
娘 乳恋しせがんだ母に拒まれて寂しくもあり大人への道
母 元気な子乗り物酔いに泣きぬれてしばし休めよ母のひざ
娘 ひざまくら母のぬくもり落ち着いて乗り物酔いに泣きぬれた旅
娘 紅に染まる白布おどろきて母に諭され十三の春
母 紅に戸惑う大声起こされていつのまにか春来るらし
母 嫁ぐ日にまばゆい光目を細め娘の幸せ永久へと続け
娘 空に舞うライスシャワーに包まれて白いドレスは母への感謝
娘 この人と暮らすと告げたその日から小さく見える母の後ろ姿
母 嫁ぐ日が近づくにつれあきらめてひとりで暮らす初めての春
母 墓参り託す花束経を読む歩けぬ足に老いの彼岸
娘 しがみつく縮んだ背中連れ参るおぶられた年は還暦間近
娘 母恋し動かぬ体にしがみつき信じたくない永久の別れ
母 最期まで寄り添う看取りをありがとう連れていきたし永久の別れ