古都チェンマイ 御厨 慶子
沙羅双樹の蕾ふくらみ傍らを小りす素早く木の間に隠る
(ワットプラシン→チェンマイの寺)
み仏がみどりごのまま歩まれる壁の絵みつむワットプラシン
青年僧が袈裟を連ねて歩みゆく古都チェンマイにオレンジの風
彫り深き青年僧居て女には触れてはならぬ戒律むごし
熱帯の風がくすぐるブーゲンビリア樹の下金の鐘の音涼し
メーピン川を船で下れば夕風に卓のランプの炎ゆらめく
まつ暗な水面に映る月の影いつしか船に寄り添ひ下る
象が描(か)く木の葉かすかに揺れている絵にも吹くのか熱帯の風
象使いの言葉わかるか山の色空の色とを違えず描く(か)きぬ
ひと筆ごとひげ甦る老紳士似顔絵かきが夜市に立ちぬ
似顔絵かきはちゃんと約束はたしてる「We can draw from your photo」
(ソンテウ→タイの乗り合いタクシー)
道たがえ赤きソンテウに手を挙げてええいままよと荷台に上がる
ソンテウで巡る城壁崩れかけ堀の水面に風情をうつす
大宮人かつて通りしターペー門バイク知らぬか暴走やまず
街路樹の木陰うれしきまわり道たまにはいいさと城壁みつむ