デジタル空想植物園4
進化は単純にコンパクトへ向かう 森垣 岳
長い冬もようやく終わり、田舎はともかく都市部でも街路樹などは変化が見られるようになりました。
冬は冬で水仙やツバキなどの花が見られるのですが、3月から4月に入りますと加速度的に植物は劇的な変化が見られます。
2月の下旬に蝋梅(ロウバイ)の黄色く香りのある花が開き、梅が最盛期を迎えます。3月に入って、ようやく梅も終わってしまうかと思われる頃に住宅街では沈丁花(ジンチョウゲ)が開きます。低木で物陰に植えられていることも多いので、沈丁花は香りを先に気付くことが多いかと思います。
そして、コブシやモクレンの大げさな花が咲いた直後に桜が咲き、春が本格的にやってきます。桜が終わる時期に車を運転していると山の谷合などに紫の藤の花がちらほら花を開き、夏に向かっていきます。
2月から7月の上旬にかけてはあちこちで多くの花を見ることができ、見飽きることがありません。
さて、この時期ですとコブシやモクレン、少し時間が経ってタイサンボクの花が咲きます。他の花と違ってやや大ぶりで肉厚の花を開く彼らは「モクレン科」という植物のグループに属していますが、このグループは他の植物と違って少し独特であると言われます。
ストロビロイド説という説があります。これは、植物は複雑な形からシンプルで無駄のない形に進化するという説です。
例えば、モクレンは一見するとおおきな一つの花のようですが、中央には雄しべと雌しべがたくさん集まったものがらせん状にならんでおり、非常に複雑な形となっています。
夏の始めの頃になると、タイサンボクの根元にマイクのような形の実があちこちに落ちているのを見ることができます。近くに寄ってみると、この実がいかに複雑な形をしているかがわかります。
一方、植物の中で最も進化していると言われるのはランの仲間だそうです。ランの花は形がバラエティーに富んでいますが、作りとしては非常にシンプルです。花びらのような形のガクが3枚、花びらが3枚の6枚でできており、中央に雄しべと雌しべが一体化した「ずい柱」と呼ばれる器官があります。これでおしまいです。形がコンパクトのおさまっている点も進化の様子が伺えます。モクレンの仲間は樹木のように巨大で複雑な造形をしていますが、ランの仲間は非常に丈が低く、葉の数も他の植物に比べると随分と少ないです。
それでもモクレンの魅力が衰える訳ではなく、引き続き魅力的な花を開き、様々な人に幸せな時間を与え続けるのでしょう。
非常に楽しみな毎日です。