短歌とTANKA

栽培実習        森垣 岳

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     栽培実習      森垣 岳

 

音を出すのみの口より少しずつ声となりゆく雨垂れの音

 

永久に今を留めて置くもよし真白き貝の化石を拾う

 

湿り気の残る堆肥を一斉にまけば華やぐ大地の匂い

 

明日もまた勤務日となる金曜に種まく土を混ぜて過ごせり

 

てのひらに種を落とせり宿題は「実り豊かな夏を迎えよ」

 

発芽したキュウリの青き葉に触れてまことのごとき嘘を説きおり

 

診断書一枚記す「発芽せず土にうもれて死にたるキュウリ」

 

にぎやかな兄弟ならば苗床のひとつを選ぶ長男我は

 

虫喰いの胡瓜の苗を捨てながら叶はぬ恋の歌をうたえり

 

若さゆえに過ちもあり植え終えたキュウリにトマトと名づけし生徒

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