短歌とTANKA

 少年少女        岩尾淳子

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        少年少女    岩尾淳子

テキストをあかるく開いている昼に大型船が岸をはなれる

 

制服を着るのを忘れてきたと言うおおかた忘れていいことばかり

 

頬杖をついて単語を覚えいる少女は流れる歳月のなか

 

忘れられしあわせそうな忘れ物ケースのなかの古いブラウス

 

あなたが言えなかった言葉を使って五月の森を完成しなさい

 

ラインから外れて動いてゆく羽根は恥ずかしそうにこつんと落ちる

 

大切なことはときおり触れていいバドミントンの羽根を揃える

 

特別支援コーディネーターわたくしは「配慮を要する生徒」に配慮すべし

 

アベヒナコがトイレに籠もってしまいたり雲を見ながらわたしは待ちな

 

飛び出していったヒナコはコンビニで菓子パン買って帰ってきたり

 

傷つくのを待っているのか赤土のテニスコートがまだらに乾く

 

靴紐がほどけているよ陽に焼けた少年たちの老いやすきこと

 

寒そうな性そよがせて校庭にほそい背骨を並ばせており

 

若い子はわるくはないな遠目にも首筋しろく輝いている

 

丘の上に校舎があれば夕映えに傾く坂を下ってゆけり

 

焼きたての餃子のように美しく少年少女は笑ってなさい

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