短歌とTANKA

 ほがらかな蝉        岩尾淳子

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リビングのつめたい床に頬をつけ淡いわたしを眠らせており

誰かから卑怯と言われて目を覚ます四時というのに蝉が重たい

価値観がちがう枝から飛んできてわりと朗らかに啼いている蝉

ひとをころすひとはころすゆっくりと実家の松の木は枯れてゆけ

守られて生きていること最果ての兵士のように信号は立つ

みっしりと耳をあつめた樟の木が燃え出しそうな八月六日

冷蔵庫のなかでレタスを腐らせているのにぼんやり考えている

きんいろの陽が射している対岸にわたしではない人がうごくよ

ルドリゴ茨木十二歳天主さまに導かれてゆくいっぽんのみち

日ざかりの路面電車にきらきらとプールへ行く子ら揺られていたり

祈ったり鶴を折ったりしないこといつか静かなところで会おうね

 

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