短歌とTANKA

奈良の歌とともに 杉中昌樹

  • HOME »
  • 奈良の歌とともに 杉中昌樹
 奈良に、着いた。白い、ドレスを着た、女、の人の、その白い袖。フロアに、人の輪が、幾重にも、出来て、曼荼羅のように、その中心に、集う神々に、混じって、僕も体を動かしている。DJが回す、ハードなテクノが、流れるような、鳥の軌跡のような、香る家具、照明が、うすぼんやりと、色の、美しい。奈良で出会った、その女の人の、白い、妙なるドレスの、人が、「盆踊りですか」と、白い袖を、顔に近づけて微笑む。「なんだか、ほろ酔いで、気分がいいのです」僕も笑った。薊の舌を持つ女、宝石の目を持つ女。僕は、その、白い、妙なる、ドレスの女の人に、見覚えがあった。初恋の人、僕が、地下鉄駅に降りていく時、背後に、ちらっと見かけた、一目惚れした、人、美しい人に、その奈良の、奈良で出会った、白い雲のドレスの人、は、似ていた、似ているような気がした。
 奈良の、その女の人の、白い、妙なるドレスの、人と、夜、風が頬に心地良い、奈良を、歩く僕は、何をしに、奈良まで、奈良に、都が、あった頃。平らかな城。鹿が、啼いて。夜の、鹿の、か細い、祈るような、女の人の、ハイヒールかたかた鳴って、街灯が、ぼんやり。鹿に、煎餅。山が、見えるの。夜の、影のような、ふたつの、やま。信号が青に、なって。青、に、良し。寂しい、夕べとなりにけるかも。街灯が、点る、奈良の。その女の人の、声が、昔、初恋の、人の、声に、似ている。地下鉄駅に、降りる時、その姿を、一瞬見かけた、ちらっと見た、美しい、女の人、僕は一目惚れ、すれ違う、野へ、山へ、美しい、人たち、良い、野へ、良い、山へ、白い、旗が、靡いている、棚引いている、空の、移り香、乾されている、白い、妙なる、布。「奈良という地名は、楢の木の葉っぱに、由来するんですよ」女の人が笑う。二つの山の間に、沈んでゆく、沈んでゆく、たましひ。今日だけは、この人を眺めていたい。
 公園の、暗闇に、鹿の目が、ふたつ、光って。僕は、どこへ、どこを、歩いているのか。どこから、どこまで。女の人が、白い、ドレスの、袖を、「高校生の頃、いつも、窓の外を、眺めていたんです。授業、さっぱり判らなくて」と微笑む。「毎日、教室の窓から、トラックで、配達に来る、人を、ぼんやり、眺めて、いつも、同じ人が、同じ時間に、学校に、小さな箱を、配達に、来るんです、その人に、あなたが似ているような気がするんです」女の人の、美しい、笑顔に、えくぼが、「僕は、旅行者です、パッセンジャーです、奈良で、配達の仕事をしたことなんてありませんよ」「ですよね」と、女の人は、ほほ、えむ。配達とは、届けること、ひとつの場所から、他の場所へ、何かを、届、ける。
 歌を、僕も、書いてみたい。奈良に、来た、記憶に、奈良に、来た、記念に。美しい、白い、妙なる、ドレスの、女性に。奈良の、歌を。奈良の、歌と、ともに。
2019年11月
« 7月    
 123
45678910
11121314151617
18192021222324
252627282930  
PAGETOP
Copyright © NADUNOKI ナヅノキ なづのき All Rights Reserved.
Powered by WordPress & BizVektor Theme by Vektor,Inc. technology.