リビングのつめたい床に頬をつけ淡いわたしを眠らせており
誰かから卑怯と言われて目を覚ます四時というのに蝉が重たい
価値観がちがう枝から飛んできてわりと朗らかに啼いている蝉
ひとをころすひとはころすゆっくりと実家の松の木は枯れてゆけ
守られて生きていること最果ての兵士のように信号は立つ
みっしりと耳をあつめた樟の木が燃え出しそうな八月六日
冷蔵庫のなかでレタスを腐らせているのにぼんやり考えている
きんいろの陽が射している対岸にわたしではない人がうごくよ
ルドリゴ茨木十二歳天主さまに導かれてゆくいっぽんのみち
日ざかりの路面電車にきらきらとプールへ行く子ら揺られていたり
祈ったり鶴を折ったりしないこといつか静かなところで会おうね