温度差といへばさういふものならむ温度差ありて空気がうごく
膝折りてゐるリャマの石像 いくたびもせよ遠来のものがたり
当時者であらうとすること
よき例歌拾はむとせし集なるにああこのひとも野次馬にすぎぬ
滅ぼしし恋のいくつか地下鉄の眠りと眠りのあはひに思ふも
長寿保険とは何ぞと問へな雌狐は目をあげて「鳥獣」と発音しなほす
髭づらで昼から出勤する男を誰もたれも現役(かたぎ)と思はず
いくたびか目をあげて見るーーー天井からながく吊られたる五円硬貨
二度死ぬことはあらねど再びを殺されるといふことあり死者には