短歌とTANKA

島の水牛        御厨 慶子

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三線をつまびくおじいの水牛車うしの蹄に行方ゆだねて

ハイビスカス角に装ふかびらちゃんおばあになりても泥道をゆく

ふるさとの田畑想ふか水平線の彼方みつめる島の水牛

影さへも見せぬ西表山猫は島の看板に仁王立ちする

密林を舟で辿れば砂浜に凛と佇む白鷺一羽

「幸せを買ってください」星の砂の小壜が迫る海辺のテント

川平湾の筏疾風(はやて)に襲はれて母貝いだくや真白き珠(たま)を

冬の孤島をさとうきびの穂染めてゆき海に銀色の風を贈りぬ

中之島の光の宴瑠璃色の公会堂を月見下ろしぬ

公会堂の煉瓦の壁のスクリーンもみの木に溶けぬ雪降りしきる

土佐堀川に聖者の灯りともす舟黒衣のサンタ舵をとりたり

湧き水のふるさとなるや養老の嶺に降りしく天なる雪は

駅舎から雪の雫の絵の箱のこうや号ゆく極楽橋へ

セピア色の五線紙の隅賛美歌のひびき漂ふとこしへの休符

置き去りの子猫の餌を奪はむと野良の母猫目を研ぎ澄ます

2024年4月
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