飛べよ飛べ杉の花粉の黄緑のかなしみ涙もつ者のため
永遠に春などめぐり来るなかれわれ花なれば心病みにき
破財者に老いのゆたけき日々なけむハレー彗星いづこを往くや
精液を吐きつづけゐし少年もああこれの世の骸なるべし
いのちなるべし、いのちなるべし。ごみ袋にいのち詰め込む春のあけぼの
断首(ギロ)台(チン)のごときビル街音たてて刃が光るたび血の匂ひくる
かがなべて幾夜を寝しや白きものまじれる髭の伸びてそよげり
野に砲車置きて去りたるものの跡若菜をもちてひそと飾りぬ
追はれきて山に帰れる日もあらむ檜原がくれの湧井の椿
食(じき)断ちのひじりのふぐりゆらゆらと春風に乗りただよひをらむ