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豪「ライムストーン短歌会」にて『月林船団』の短歌の紹介    小城小枝子

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月林船団」の短歌の紹介
ライムストーン短歌歌人〔グループ〕
2012年3月18日
小城小枝子

 

小城は昨年帰国し、大阪で開かれた「日豪短歌朗読コンサート ―調べへの回帰―」に参加以来、その折に特に再度親しくお目にかかれた「月林船団」の方々のすばらしい短歌を何とかキャンベラの歌人に紹介したいものと願っていた。

 

ライムストーン短歌歌人〔グループ〕の誕生

小城は1972年〔昭和47年〕に渡豪、豪州に滞在丁度40年になるが、

2010年になって居住するキャンベラ市にある英文短歌グループ、ライムストーン短歌歌人〔グループ〕に入会した。英語名は’Limestone Tanka Poets’ 〔以後略してLTPとする〕。この短歌グループは詩人・歌人である Kathy Kituaiのイニシャチブと努力によって立ち上げられたものである。彼女によれば、既にかなりの発展を見せていた他州に於ける短歌コンファレンスに2010年に出席したことが直接の引き金となって、必ずや首都のキャンベラにも同様の短歌活動をせんとの熱意によって起ったとのことである。

 

LTPの活動

2010年2月発会当初8名のメンバーであったが、現在14名を数え、増加の気配をみせている。毎月最後の日曜日に2時間の会合を持ち、お互いに持ち寄った短歌の感想・批評をし、その他、ゲスト・スピーカーを招聘したり、昨年は日本から北久保まりこ、豪州の短歌誌、’Eicalypt’の編集者であり、歌人のBeverley Georgeを招いての特別イベントを開催した。このイベントには多数の自由詩人も参加した。

 

そして、今年は特に「月林船団」の紹介と二ヶ国語による作品朗読による幕開けとなった。小城の話は、日本の歌壇の規模の説明に始まり、「月林船団」のメンバーが「アララギ派」に属しながらも、数々の輝かしい成功をおさめたこと、彼らの短歌がなかなか理解されなかったが、次第に年配者も注意を以って、耳を傾けるようになったこと、結果、「アララギ派」に新風を吹き込むことになったこと、又、話は人々に誤解されやすい、そして理解しにくい「写生」の意味などにも言及された。そして、作品の朗読は、小城による日本語で二度、Amelia Fieldenによる英語で二度ずつ行われた。

 

Kathyは特に心を動かされた作品として次の二首をあげている。

 

宮崎大治

電灯には夕焼けがないものだから夜更かしをしてしまふのかしら

under electric lighting

there is no sunset —

perhaps

that is why I

stay up so late at night

 

田中教子

満月のかげをやどした皿の水飲んでしばしは明るくなれり

drinking water

from a dish that held

the reflection

of the full moon,

I grew bright

 

英文短歌の歌人の中にはあまり日本人の作品にふれる機会がない人々も居られることを予測して、「月林船団」の各歌人の作品、夫々五首ずつを選び、Amelia Fieldenと小城小枝子の両名が英訳してあったもののコピーを出席者に手渡してあるので、必ずや、各作品の切り口、題材などを大いなる興味を持って読み込んでおられると思う。

 

LTPのような短歌グループにとっては、世界に散らばる短歌グループとの交流は、それぞれのグループの発展、研究のためにも、欠かせないものと思っている。貴重な機会であったと喜んでいる。

 

小城小枝子

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