短歌とTANKA

     水     御厨慶子

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雨の雫も違ふ海へと流れをりトンネルゆくうち水が分かれて

青楓揺るる川床大宮人紙漉きしとふ水の音がす

ずぶ濡れになりて遍路が山門に頭(かうべ)たれをり菅笠脱ぎて

夏祭りに汗して西瓜引き上げし父はもう亡く古井戸枯れぬ

マンホールの蓋雨に濡れ姉さん被りの女が浮かぶ

宴果てても許されず池巡りたる電飾の船がらんどうなり

災ひに命奪われし者たちよ御廟のせせらぎ卒塔婆を浄む

十二単のをみなばかりを撮る男詠まれし歌を聞かず去りたり

隣家の屋根に居候せし朝顔を夫(つま)が払ひぬ花つけしまま

枯れてなほ姿崩れぬ紫陽花のわづか一輪死化粧する

ちさき函に互ひの煙クロスさせスーツの男ら搭乗口へ

天窓の空に迫りし黒き脚中世の城をドローン犯す

2024年4月
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