お向かいの人が出てきて溝を掃くその後に出て我も清めむ
手ぼうきを動かす溝は浅からず汚泥のうえに浮かぶ落ち葉よ
きれぎれに時雨ながれる北側の窓の向こうに鳥居がひかる
あわくながく勤めきたりて何かある冬の野菜のあかるかりけり
この子たち膝を抱えて寒そうにセンター試験の話を聞くわ
かの国の古新聞に包まれてアレッポの石鹸もらいしころよ
十二月に溜まった段ボール箱を潰すなつかしいはずのない箱
帰り来て嗽する音ほろほろと途切れとぎれにあなたが分かる
僕たちはなんでこんなに分からぬと言わせてしまう悲しくなって
美術館が閉ざされるという風説がリアルな冬を生きてゆこうか