処女懐胎告ぐる天使に猛禽の翼与へしレオナルド
うつすらと神の指紋は捺さるるや昼月羞し裸木のうへ
林檎酒の泡の中なる婚礼の秋の陽昏れゆくまでのたまゆら
夕茜雲閉ぢこめしホットケーキあふみのうみの卓へ届けよ
還らざる皇子はいづこゆふぞらは卵かぎりなく流したまひき
三輪山の天仰ぎみしいにしへのひと、きみ、われも月の族ぞ
かぎ針に月のひかりを掬ひつつ窓辺にレース編みたまふなり
リングネーム持つ青年夜のジムに濡れしつばさ閉ぢて佇ちたり
チャルメラのこゑ満つるなれ夜の天へ手つなぎゆかむ非常階段ゆ
ふたひらの秋としづかに接吻したきクラリネットのやうにあらぬ身は