短歌とTANKA

黒き花びら

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黒き花びら   森垣 岳

 

黒百合・黒米・黒柿など名前の通り黒い色をした植物は世間に多く見ることができるが、植物に黒い色素は存在しない。紫や茶色の色素が普通の植物よりも強く発色しているにすぎない。それでもなお黒い植物を人々が求め、品種改良されるのは万物の根源を黒という色に見出しているからかもしれない。

 

シャットダウンすれば暗闇さむざむと見覚えのなき夜が広がる

 

出目金の黒きカバンの底にある夜の暗闇に名刺を落とす

 

ぬばたまのブラックコーヒー一杯の苦さに気付き死期を伸ばそう

 

ポケットの中黒々と夜があり 余命わずかなアプリがひとつ

 

アイコンに犬の写真を用いれば犬が感謝の気持ちを語る

 

星多き空を眺めて寒々とマクロファージの形を描く

 

花一輪もらえぬままに日の過ぎて真冬の夜の夢と気付けり

 

文字書けば墨あざやかに走りゆき飛行機雲となりて青空

 

小鳥ほど小さき闇を凍らせて未だ解凍できないでいる

 

心まで固くなってはしまいかと銀杏大樹の落ち葉に問えり

 

花束を妻に送りぬ花束をもらえる価値のなき夫より

 

ダアリアの花の黒さの中に立ち「アバダ・ケダブラ!」光を放つ

 

一人きり夜道の果てよりエクスペクト・パトローナムの守護霊が来る

 

チュリップの黒き花弁よ本当は嫌だと言ってしまえば楽か

 

地下をゆく列車一台日光を避けてヤスデが隠れゆきたり

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