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デジタル 空想植物園 7 「最強の生物を食べる」   森垣 岳

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最強の生物を食べる」   森垣 岳

 

今はもうずいぶん少なくなってしまいましたが、テレビの特集などでアマゾンの奥地などに「謎の巨大生物を追う」といった趣旨の番組がありました。

散々引っ張った挙句に番組の最後に足跡が発見されただけで終わったり、地元の人が描いたぎこちない絵が映し出されて終わってしまったりするのがお決まりのパターンだったように思います。

最強の生物と言うと、イメージされるのはそういった巨大で獰猛な動物を想像しますが、広い視野でみると、最強と言える生物は冷蔵庫に置かれている納豆の中に潜んでいます。

納豆を作っているのは言わずと知れた納豆菌です。これは枯草菌というグループの菌の一種で、本来はその名の通り稲わらなどの枯れた草を分解して過ごしています。

伝統的な納豆は稲わらに包まれた状態で販売されますが、これは稲わらのなかに納豆菌が含まれているためです。この菌が茹でた大豆に移動して広がり、納豆として食べられるようになります。

家庭で納豆を作る場合、高温に蒸された大豆に市販の納豆を少し加えて保温しておくと数日で完成すると言われています。高温の状態では他の菌類が死滅してしまうのですが、納豆菌だけはそんな状態でも生き残ることができるからです。

では、どれくらいの環境に納豆菌は耐えることができるのでしょうか。兵庫県の明石市の高校で行われた実験ではなんと、100℃に1時間ほど耐えることができ、さらに極端な酸性・アルカリ性(pH1~12)であっても死滅せずに生き残っていたのだそうです。

極端な環境になった時は胞子の状態に自分の形を変え、環境が戻るまで耐えるのだそうです。

だからこそ、デリケートな実験を行う際は事前に納豆を食べることを控えなければ、実験の途中で納豆菌が出てきて失敗するほどの強さを持っています。

それでも納豆には賞味期限が設定されています。こんな強い菌であれば、他の菌によって「腐る」ことはまずありません。豆そのものにも納豆菌がしっかりまとわりついているため、他の菌が入り込む余地がないからです。

それでも賞味期限が設定されているのは、納豆菌自体が強すぎて必要以上に発酵が進んでしまって味が変わってしまうのが原因なのだそうです。

身近な生き物ですが、その力の強さが見込まれて環境浄化や健康食品に使われるなど、広く活躍する最強の生物の納豆。

これからも注目です。

 

 

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