短歌とTANKA

花なれば      喜多弘樹

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飛べよ飛べ杉の花粉の黄緑のかなしみ涙もつ者のため

永遠に春などめぐり来るなかれわれ花なれば心病みにき

破財者に老いのゆたけき日々なけむハレー彗星いづこを往くや

精液を吐きつづけゐし少年もああこれの世の骸なるべし

いのちなるべし、いのちなるべし。ごみ袋にいのち詰め込む春のあけぼの

断首(ギロ)台(チン)のごときビル街音たてて刃が光るたび血の匂ひくる

かがなべて幾夜を寝しや白きものまじれる髭の伸びてそよげり

野に砲車置きて去りたるものの跡若菜をもちてひそと飾りぬ

追はれきて山に帰れる日もあらむ檜原がくれの湧井の椿

食(じき)断ちのひじりのふぐりゆらゆらと春風に乗りただよひをらむ

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