み熊野の神の遣ひの八咫烏(やたがらす)旅立ち見守るみ旗となりぬ
本宮の黒き尊き八咫ポストすべての色を身内に包む
重盛の手植えの梛(なぎ)の木神宿りしめ縄にかかる若葉艶めく
わがさだめつゆも知らずに実朝の詠みし梛の葉今もしだれて
たやすくは裂けぬ梛の葉忍ばせてをみな祈れりとこしへの愛
いにしへのをみな詣でし杣道を春色リュックの山ガールゆく
熊野灘をかもめ飛び発ち薄墨の翼かすめる有明の月
ひとけなき列車の窓のスクリーン橋杭岩のそそり立つ海
どうしてもちゃんとはまらぬ貝合はせ内には別の絵の橋架かる
四つ橋と土佐堀橋の描かれて二人の橋は近くて遠し
ひもじさに野良の子猫が硝子戸にピタリ張り付きとびきりの顔
引き出しに男眠れり板垣退助翁(たいすけおう)髭なびかせる百円紙幣
若者らスマホに見入り車窓には顧みられぬ碧き生駒嶺