短歌とTANKA

夏休み     森垣 岳

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夏休み   森垣 岳

夏休みが純粋に楽しいものだったのはいつまでだろう。

大人になって夏休みと呼ばれる期間がなくなってしまい、毎年ふっと思うことだ。

だから休みたいと言う訳ではないのだけど、仕事が立て込んでくるとついついそういう気楽な方向を対岸から眺めて憧れてしまう。

隣の芝生は青いが、後ろの芝生もまた青かったのだ。

 

 

「僕がこの本を選んだ理由は」と感想文と夏の始まり

残酷とう言葉を知らず蝉を踏み蟻の触角抜き捨てし夏

漢字ドリルの文字をなぞればおぼろげな霊が再び甦るごと

父親に手を引かれゆく海蒼し写真一枚ふいに落とせり

朝顔の観察記録早々と種子を残さず枯れてしまえり

宿題は後に回さん人生の課題もいまだ果たせずにして

クマゼミをかご一杯に詰め込みぬやがておおきなセミとなるまで

ラジオ体操の音彼方より聞こえきて健康的な朝を憎めり

夜光貝(やくがい)のきらめき光るかなぶんの羽一枚を箱にしまえり

まなうらをめくりかえしてあかあかと三日月を示す友いまはなし

雨晴れて最後のせみの一匹が細々なきて夏が終わりぬ

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